東南アジア地域研究専攻
Division of Southeast Asian Area Studies
東南アジアとアフリカは共に、⑴強靱な熱帯生態のもとで自生的な歴史を展開してきたという共通性をもっており、とくに東南アジアでは、⑵国家を単位とする経済発展や社会変容が加速され、他方で国家を越えた地域統合が進展しつつあります。また、⑶急激な経済発展と連動しながら、生態・社会・文化が相関して新たな状況を生みだすという、多相的な展開を遂げつつあります。
このような東南アジア地域の固有性を踏まえ、⑴~⑶のそれぞれの特性と課題に対応させて、本専攻には、「生態環境論」「地域変動論」「総合地域論」の3 つの研究指導分野を置いています。
講座・指導教員紹介
生態環境論講座
東南アジアの基盤をなす自然と人間活動との相互作用により形成される生態環境の特質を明らかにするため、自然生態と社会生態に関する教育研究をおこないます。
竹田 晋也(たけだ・しんや)
E-mail: takeda.shinya.4s@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
東南アジアのモンスーン林で営まれる林業に関心を持ち、アグロフォレストリーや非木材林産物生産について研究してきた。断片として残された森や、再生される林を注視しつつ、熱帯林と人間との関係に焦点をあて研究を続けている。
〔社会生態論II、地域研究論、生態環境論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
古澤 拓郎(ふるさわ・たくろう)
E-mail: furusawa.takuro.3w@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
人間は、生態系の中で生存し健康を維持していくことができるように、身体機能など生物学的に適応してきた一方で、食糧などを獲得するための技術や知識を得てきた。アジア・太平洋地域における、このような人間と生態系の関係と、その変容を、多面的に研究している。
〔自然生態論II、生態環境論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
小坂 康之(こさか・やすゆき)
E-mail: kosaka.yasuyuki.8c@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
アジアにおける自然環境の改変、農業の近代化、農村の過疎化などの現象を、人と植物の関係を指標に研究してきた。具体的には、農業生態系の植物相、外来植物の分布拡大、市場で販売される野生植物に関心がある。
〔自然生態論Ⅰ、生態環境論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
山崎 渉(やまざき・わたる)
E-mail: yamazaki@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
食品微生物学、環境生態学、感染症学(ヒトと動物の両方を対象)。グローバル化の進展により病原体の越境移動が増加しているので、国内外の被害を抑制するための実践的な研究に取り組んでいる。病原体の新しい検査技術を主に国内で開発し、タイ、ベトナム、ミャンマー、エジプト、タンザニア、英国、スペインで現地研究者と共同して、性能評価をしている。開発した技術を国内外での疫学調査に利用し、病原体の生態解明に取り組んでいる。
〔環境・感染症論、生態環境論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
坂本 龍太(さかもと・りょうた)
E-mail: sakamoto65@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
孤発例レジオネラ症患者の感染源、高所適応と老化の関連、ラダーク・ドムカル谷における高齢者の健康としあわせ、ブータンに適した高齢者ケアのあり方などをテーマに研究を行ってきた。人々の健康と自然環境、文化的背景の関係に焦点をあてた研究を行っている。
〔人間生態学、アジア・アフリカ地域研究演習、生態環境論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
木下 こづえ(きのした・こづえ)
E-mail: kinoshita.kodzue.8v@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
動物たちは、それぞれに長い年月をかけて環境に適応し、種特有の繁殖形態を進化させてきた。生息環境が変化すると、彼らの繁殖にどのような影響を及ぼすのか?を大きなテーマとして内分泌学や動物行動学などの視点から研究している。主に生態系頂点捕食者のネコ科動物を対象としているが、鳥類、陸生哺乳類、海生哺乳類など、多種多様な希少種の研究に携わっている。
〔社会生態論Ⅰ、生態環境論研究演習Ⅰ~Ⅳ、アジア・アフリカ地域研究演習、東南アジア論課題研究Ⅰ~Ⅲ、アジア臨地演習Ⅰ~Ⅲ〕
中村 亮介(なかむら・りょうすけ)
E-mail: nakamura.ryosuke.7x@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
生物多様性が高い熱帯の森は、様々な物質を循環させることでその生態系を維持している。これまで東南アジアのボルネオ島を中心に、植物―土壌間の相互作用機構の解明を行なってきた。具体的には、様々な土壌環境に生育する植物に焦点を当て、生態系ケイ素循環、有機物の分解、植物の生存戦略の機構解明に取り組んでいる。近年は、熱帯林の長期的な保全や、人為的なかく乱が生態系におよぼす影響にも強い関心がある。
〔生態環境論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
地域変動論講座
東南アジアの内発的発展及び変動のエネルギーと方向性に焦点を当てながら、地域発展・地域変動に関する教育研究をおこないます。
片岡 樹(かたおか・たつき)
E-mail: kataoka@asafas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
東南アジアにおける、国境を越えた民族や宗教の動態に関心をもっている。これまではタイ北部山地の少数民族地域をフィールドとし、研究を行ってきた。現在はその視野をさらにビルマ(ミャンマー)、中国西南へ拡大するとともに、南タイ・マレー半島地域の中国系住民の宗教実践の調査にも着手している。
〔宗教社会論、地域変動論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア・アフリカ地域研究演習、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
伊藤 正子(いとう・まさこ)
E-mail: ito.masako.8e@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
ベトナム現代史。国民国家における少数民族政策と少数民族側の応対に関して、東北山間部でのフィールド調査をまじえて研究してきた。現在はドイモイ改革下の少数民族政策の変容が課題だが、東南アジアでのナショナリズムの諸相とからめて論じていきたい。
〔地域歴史論、ベトナム語III、アジア・アフリカ地域研究演習、地域変動論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
岡本 正明(おかもと・まさあき)
E-mail: okamoto@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
権威主義的なスハルト体制崩壊後のインドネシアにおいて「ビッグバン・アプローチ」とも言われるほどラディカルな形で始まった地方分権化が一体どのような地方政治の変動をもたらしているのかについての分析枠組みを提示することが現在の私の最も大きなテーマである。また、インドネシアと比較する意味でも、この作業と並行する形で東南アジア各地の地方政治研究の業績を見直している。
〔地域相関論Ⅰ、地域変動論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
山口 元樹(やまぐち・もとき)
E-mail: yamaguchi.motoki.7n@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
オランダ植民地期から独立直後までの時期を対象に、インドネシアのイスラーム運動を研究している。これまでは、主に20 世紀前半のアラブ系住民の活動と彼らの社会統合について扱ってきた。現在ではより幅広くイスラーム運動と国民形成について、中東アラブ地域、さらにシンガポールやマレーシアなど東南アジアの他の地域との関係を考慮に入れて検討している。
〔宗教史論、地域研究論、地域変動論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
師田 史子(もろた・ふみこ)
E-mail: morota.fumiko.8p@[この後にkyoto-u.ac.jpを付けてください]
フィリピンの数字くじや闘鶏といった賭博、宝探しなどの賭けの実践を対象に、人びとがいかに不確実性に対処しているのかという問題系について人類学的に研究してきた。参与観察に基づいて人びとの賭けの内在的動機を明らかにすること、賭博現象からフィリピン社会の動態を捉えなおすことを目的としている。
〔地域変動論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、 アジア臨地演習Ⅰ~III〕
総合地域論講座
多面的な展開を示す生態・社会・文化が相関的に展開する実態に焦点を当て、生態相関・社会相関・地域相関に関する教育研究をおこないます。
石川 登(いしかわ・のぼる)
E-mail: ishikawa@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
対象社会の歴史的検討とフィールド・ワークによる共時的理解を二つの柱としながら、マレーシアとインドネシアに関する社会人類学的研究に従事。近年は、マクロとミクロな社会動態の接合面に注目しながら、国民国家形成、共同体と民族の生成プロセス、労働の組織化、文化の権力論、商品連鎖、トランスナショナリズムなどの考察をおこなってきた。最新のプロジェクトとしては、モノカルチャー型プランテーション(アブラヤシとアカシア)に包摂される熱帯バイオマス社会の生存基盤研究、ならびに日本とボルネオにおける「森林」(里山や商品作物植栽林を含む)を複眼的に考察する歴史人類学的研究に従事している。
〔地域研究プロジェクト・デザイン、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
柳澤 雅之(やなぎさわ・まさゆき)
E-mail: masa@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
東南アジアの生態史を研究。人と自然の関係の歴史的な変化に関心を持つとともに、現在の人や社会と自然の関係を長期の生態史に位置づけることを試みる。別の言い方をすれば、農学の技術的側面だけでなく、農村社会や農家経済と地域の生態環境の関係、さらには、生業体系と地域史の関係に関心を持つ。
〔東南アジアの農業・農村、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
甲山 治(こうざん・おさむ)
E-mail: kozan@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
日本、東アジア、中央アジアから東南アジアにかけて、土地利用の改変をはじめとする様々な人間活動のインパクトを、水循環モデル等の数値計算を用いて解析している。その際に自然環境の持続性のみならず、自然環境と人間活動の相互作用に関して解析を進めることで地域の特性を明らかにしている。これまでに梅雨期の中国における水管理が大陸スケールの水循環に与える影響や、アラル海流域における水利用変化が地域気候に与える影響、インドネシアにおける大規模植林がもたらす環境への影響等の評価を行っている。
〔水環境・風土論、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
三重野 文晴(みえの・ふみはる)
E-mail: fmieno@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
東南アジアの経済について、金融システムの観点を主な足場に、実証的な研究をおこなっている。最近の研究の取り組みの対象としては、タイを中心としマレーシア、インドネシア、フィリピンを比較対象とする金融システムの特性、タイ東北部およびラオスにおける農村の金融組織のありかた、ミャンマーの経済構造、タイ・ミャンマーを対象とする中小規模企業の商品や資金の取引構造などがある。 今後の研究関心として、東南アジアにおけるエスニシティー構造に対応した企業・金融部門の歴史的発展経路、所有権と商取引の構造的特性、従来の直接投資・加工工程移転型の工業化を超えた成長のあり方、またそれを支える労働・金融のシステムのあり方などに興味を持っている。
〔東南アジア経済論、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
小林 知(こばやし・さとる)
E-mail: kobasa@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
カンボジア農村でフィールドワークをおこない、その社会の歴史的な変化について民族誌を書くことを目指して研究を始めた。紛争と国際的孤立の後、カンボジアに新しい国家体制が誕生してからまもなく20年が経つ。この間、諸外国や国際機関の関与の下でつくられた国家は、コミュニティに暮らす人々の生活にどのような影響を与えてきたのか。この問いを実証的に解明することが目下の最大の関心である。また、東南アジア大陸部の上座仏教徒社会の多様性と共通性についても関心をもち、調査研究をおこなっている。
〔比較農村社会論、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
中西 嘉宏(なかにし・よしひろ)
E-mail: nakayoshi@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
東南アジアの政治、特にミャンマーと軍隊と政治との関係について、軍事政権の長期持続の要因を明らかにすべく研究をおこなってきた。最近の同国の変化にともない、体制変動の内的・外的な原因や、現在の政治的意思決定を規定する公式・非公式の制度についても調査を実施している。最近は一国研究だけでなく、東南アジアを主な対象にした政治運動や紛争の比較研究に関心を持っている。
〔紛争と平和、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
町北 朋洋(まちきた・ともひろ)
E-mail: machi@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
済発展への理解を深めるため、東アジア・東南アジアにおける近年の産業発展の原因と帰結を研究している。特に労働経済学を中心に、都市・地域・国際経済学、産業組織論、開発経済学の方法論を取り入れた分野横断的なアプローチを用いている。第一に、東南アジアでの産業・企業の技術移転に関する研究、日本における外国人労働力を中心とした労働市場の研究、20 世紀初頭の産業革命期の日本を対象とした企業成長についての研究、現在のエチオピアを対象とした職業訓練についてのサーチ理論的研究も進めている。最近では、都市化とモータリゼーションが急速に進む地域における社会的課題を考察するため、タイにおけるトラック運送業の交通事故に注目し、契約理論的な観点から生産性と安全性のトレードオフを改善する雇用契約のあり方について研究を始めた。
〔東南アジア経済論II-III、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア地域研究公開演習、アジア臨地演習Ⅰ~III〕
R・マイケル・フィーナー
E-mail: feener@cseas[この後に.kyoto-u.ac.jpを付けてください]
私が主に専門としているのはイスラーム研究であり、特に東南アジアとインド洋海域世界のムスリム社会の歴史に重点を置いている。その地理的領域の中で、私の最初の2 つのモノグラフは、インドネシアにおける法学の思想と実践の歴史を扱ったものである。私の研究対象はインド洋沿岸に広がるイスラーム海域世界にも及んでいる。エジプトから東部インドネシアまでの広範な地域のムスリムのネットワーク、クルアーン研究、スーフィズム、シーア派、地域間交流史、地方史(特にアチェとモルディブ)、宗教と開発、人道主義と災害後の復興、そして考古学的現地調査などのテーマについて研究し、発表してきた。現在、オックスフォード大学歴史学部のアソシエイト・メンバー、メルボルン大学法科大学院インドネシア法・イスラーム・社会研究センターのシニア・アソシエイト、海域アジア遺産調査プロジェクト(MAHS)の責任者を兼任している。
〔東南アジアのイスラームの歴史、総合地域論研究演習Ⅰ~IV、東南アジア論課題研究Ⅰ~III、アジア臨地演習Ⅰ~III〕