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「国際ブックフェア会場を見て回るには、最低1週間はかかる」
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こんにちは、エジプトの首都カイロからお便りします。イスラーム諸国は、東南アジアのマレーシアから、北アフリカのモロッコまであちこち旅する機会があって、それぞれにいいものですが、青春の2年間を過ごしたエジプトには、やはり特別の思い入れがあるものです(ああ、もう15年も前!)。それまで、日本にいながらアラビア語の本と格闘するという、ある意味ではとても暗い文献学漬けの日々を送っていた私にとって、地中海的な明るいエジプト人たちとの暮らしは、大げさに言えば人生観が変わるほどの体験でした。イスラーム研究に一生を捧げても悔いはない、と思ったのもカイロ留学中のことです。 |
今回は、アジア・アフリカ地域研究研究科のために、アラビア語の本を集めに来ています。やたらにでかい会場で、国際ブックフェアが開かれているのです。物見遊山に来る家族連れをあてこんで、会場内には即席の路上電車まで走っています。ふだん、なかなか手に入れることのできない、湾岸諸国やイラク、パレスチナなどの本も、こういう大規模なブックフェアでなら入手できます(エジプトの本に比べてやたら高いのが困りものですが)。 |
そもそも、私たちは、現地というフィールドと、文献というフィールドを掛け合わせて、地域研究をしようとしています。イスラーム学という長い知の伝統を持つイスラーム世界では、文献を抜きにして対象を知ることは不可能だからです。現地で書店を回るというのは、まさに現地と文献の重なり合った部分を歩くわけで、何より楽しいものです。 |
本屋の売り子との会話にも、はっとするようなヒントが潜んでいることがあります。今回は、イランからの本を売っている書店でおもしろい体験をしました。私は、スーフィズム(ふつうイスラーム神秘主義と訳されます)の本がほしいと言って、サファヴィー朝時代の有名なスーフィーであるモッラー・サドラーという思想家の本などを選んでいました。すると、まだ年若い店の青年が、不思議そうな顔をして、「しかしあなたの選んでいる本は、スーフィズムじゃなくて、叡智の学じゃないか」と言うのです。(1枚に書ききれなくなりました、もう1枚続けて書きますね) |
From: 東長靖 (連環地域論講座) |