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東南アジア地域研究専攻
第7回 加瀬沢雅人:連環地域論講座

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「グローバルな波にもまれる「部族民」医療」


インドの南端に位置するケーララ州はあたり一面が椰子に囲まれた南国です。しかし、その生 態は多様で、都市部のある海岸沿いからすこし内陸部に入るとゴムのプランテーション、そして茶畑が広がる丘陵地帯となります。また、そこは「部族民」がいる地域としても有名です。
ある日、友人に誘われて、この丘陵地域にある部族民の村を訪れる機会がありました。バイクで3時間、そこから山道を歩いて1時間ほどのところにこの部族民の村がありました。私が訪れたかった部族民の民間治療師にも会えました。しかも幸運にも、その治療師はこの地域一帯でとても有名な治療家とのことでした。彼は周辺に生息する生薬を用いて治療します。その治療技術には定評があり、名声は州政府にまで届いています。近年では、政府の上級官吏に治療をおこなうために、都市に出かけることもあったといいます。彼の治療技術は州政府によって保護され、彼の生薬処方を州公認の「トライバル・メディシン」として開発しようとする計画がもちあがっています。彼もこのような状況をうけて、自身の治療技術を、限られた地域の枠から、広範な地域へと拡大したいという期待をもっています。
彼に会ったとき、最初はなかなか口を開いてくれませんでした。生薬の知識を探りに来たのではないかと疑われたのです。現在、民間の生薬や治療技術が世界規模で注目されていて、新薬開発のための調査者が村落の奥までやってくるといいます。そして生物資源の知的所有権問題は国レベルでの大きな問題になっており、彼らは外国人調査者を必要以上に警戒しているのです。これまでも、私はさまざまな所で製薬会社の送り込んだ生薬調査者ではないかと疑われてきました。このことが調査を困難にしていますが、解決する方法はただ一つ、自身の研究目的を説明して、辛抱強く信頼関係を築いていくことだけです。
From: 加瀬沢雅人 (連環地域論講座)