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アジア・アフリカ地域研究情報マガジン 第255

■■■ September 2024 第255号 ■■■■■■■■■■■■
アジア・アフリカ地域研究情報マガジン
ASAFAS INFOrmation Magazine
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/
■■■■■■■■■■■■【発行部数 1,098】■■■■■■■■■

___________今月号の目次 Contents__________

□ フィールド便り.................. 食欲が湧く青いご飯
□ メルマガ写真館.................. ダンボールと結束バンドとバナナ
□ 最近の出来事.................... 研究会情報
                         Facebook・X(旧Twitter)情報 
□ 編集子より

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■ フィールド便り Letter from the Field
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「食欲が湧く青いご飯」
河野 奈津美 (グローバル地域研究専攻)

 青は食欲を減退する色と考えられ、青を基調とする内装の飲食店は少ないです。それが食べ物ならなおのこと、どこか不自然さがあり、自分から進んで食べようという気にはなりません。しかし、私がマレーシアの首都クアラルンプールの小さな食堂で出会ったのは、「また食べたい!」と思わせる美しき青いご飯なのです。
 青いご飯の正体である「ナシクラブ(Nasi Kerabu)」は、バタフライピーの花で色付けしたご飯に、パクチーやもやしなどの生野菜をのせた料理です。青い見た目はインパクトがありますが、バタフライピー自体にクセはなく、ご飯にのせられた野菜や辛みのあるソースが爽やかな風味を醸成します。
 私がナシクラブに出会ったのは、最寄駅に近い小さな食堂(Warung)でした。食堂といっても店舗を構えているわけではなく、プラスチック製の椅子とテーブルをアスファルトの地面に並べ、大きなテントで囲ったような形態です。その店は午前しか営業しておらず、朝に駅へ向かう途中で見かけると、いつも長い行列ができています。「地元の人が並んでまで食べたいのだから、美味しいに違いない」と思った私は、青いご飯が売られているとも知らずに列の最後尾に加わりました。列をつくっているほとんどの人は、マレー系に見えます。待ち時間に退屈していると、前に並んでいた60代くらいの男性が「どこから来たの?」と話しかけてくれました。私はこの辺に住んでいて、よく行列を見かけていたこと、日本の大学で勉強していることなどを話ました。その男性は私にお勧めの料理と、ナシクラブがマレー半島の北東部でよく食べられていることを教えてくれました。
 人気店で席が込み合っていることもあり、そのままその男性と相席してナシクラブを食べました。彼はもう何十年もこの辺りに住み、飲み物の注文を取りに来た店員の男性とは友人だと言います。既に仕事は退職しており、近所での朝食を楽しみ、その後には子供夫婦や孫の面倒を見で過ごすのだそうです。
 また別の日にこの食堂を訪れると、この前の男性店員の周りに60代くらいの男性5人が集まり飲み物を片手におしゃべりに興じています。店員は私に気がつくと手招きをし、会話の仲間に入れてくれました。マレー語がまだ拙い私でも、食堂の日常風景にお邪魔させてもらえることに、彼らの寛容さや分け隔ての無さを感じました。通勤時間帯の満員電車は、もはや東京を想起させるほどに、都市クアラルンプールの朝はせわしなく過ぎます。しかし、食堂の一角で十分には聞き取れない会話に耳を澄ませていると、朝食を拠点に友人と話す時間の豊かさが舞い戻ってくるのです。
 写真フォルダのナシクラブを眺めると、私にとって青はもはや食欲を減退する色ではないようです。ナシクラブの青は人との会話の温かみを思い出させ、また一緒に食べる時間を心待ちにさせる色になりました。

写真1 青いご飯が特徴的なナシクラブ。男性のお勧めは炭火で焼いた牛肉をのせたもの
写真2 店の前にできる行列。30分以上待つこともある
写真3 飲み物を片手に友人とおしゃべりする客たち

(上記フィールド便りに関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid0jQBtunPmj8a5EdvzaqsbtRbqtBomeDv1fAC9Wq9VE76q3BsXqsi21tz6xi3dK7NEl


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■ メルマガ写真館 Photo Gallery
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「ダンボールと結束バンドとバナナ」
北嶋 泰周(グローバル地域研究専攻)

 私が調査するネパールの首都カトマンズの中心に位置する旧市街地アサンには、自転車で果物を売る露天商がいます。彼らの多くはインド・ビハール州からやってきた人たちで、複雑な小路を練り歩きながら毎日60~70kgの果物を叩き売ります。しかし、2022年からカトマンズ市当局の取り締まりが厳格化され、自転車ごと押収されるようになってから、自転車を使わなくなる露天商も増えてきました。
 その一人であるナナク(30代男性)は、アサンで10年以上もバナナを売っており、無愛想なインド系果物商人が多いなか、数少ない社交的な人物でもあります。そのためか、仲の良い露天商には「おやつ」と称して勝手にバナナをむしり取られることがあります。かくいう私もその一人です。
 2023年1月中旬、イチゴを売る私の隣にダンボールを持ったナナクがやってきました。彼が結束バントを外すのに苦戦していたので、私はハサミを貸そうとしましたが、彼はそれを断りました。彼はダンボールを開き、結束バンドをもう一度丁寧に付け直し、その上に商品のバナナを置き、私にこのように語りました。
「こうやって箱の角とバンドを使ってバナナを置くんだ。遠くにいる人にバナナが見えるようにするんだよ。お前もイチゴを上に積んでいくだろ?」
 彼はダンボールを裏返して台にすると、市警察の摘発から逃げ遅れてしまうと言います。これはナナクが編み出した、摘発を逃れながら上手に商売を続ける知恵であり、そのためには結束バンドが必要不可欠でした。
 私がネパールを訪れるたびに、彼らは私に新しい商売の知恵をお披露目してくれます。ネパール渡航が直前に迫るなか、次に彼らが私にどのような驚嘆を与えてくれるのか、非常に楽しみです。

(上記メルマガ写真館に関する写真は次のFacebookでご覧ください。)
https://www.facebook.com/asian.african.area.studies/posts/pfbid0wq5robQ5tymkkk9XY5BGhLn3a4qnBjjuuLLrCVjjbzo13aTm2eQkwSCczbsSr8P3l

(過去のメルマガ写真館は、次のURLからご覧いただけます。)
https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/photoessay/


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■ 最近の出来事 Recent Topics
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□研究会情報
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IDE /123rd KUAS/The 14th IAfP/The 9th LS seminar
講演タイトル Food Insecurity and Survival Strategies of Low-Income Urban Residents in Addis Ababa, Ethiopia.
講演者  Mamo Hebo(JSPS/京都大学ASAFAS/Addis Ababa Univ.)
開催日時    10月11日、14:00-16:00 (日本時間)
開催方法    ハイブリッド(対面/オンライン)
対面会場 アーク森ビル・会議室(東京都港区赤坂1-12-32)
事前登録(10月7日まで): https://forms.gle/W89EXgMT3X11YfGF7
URL :https://iafp.africa.kyoto-u.ac.jp/9th_iafp_20241011/

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■ 編集子より From the Editor
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 秋分を越えると、猛暑も和らぎ、ようやく過ごしやすい季節を迎えます。フィールドワークから戻ってきた若き研究者たちは、学問の秋をどう過ごされるのでしょうか。必死で仕入れてきた生のデータをクールになった頭で分析し、新たな学術成果として発表する準備を進めていることでしょう。京都の山々が色付く頃には、彼らの研究が学会を賑わせることでしょう。(H.I)
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編集/発行:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)広報委員会
ASAFAS キャリア・ディベロップメント室
ASAFAS 次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
    臨地教育・国際連携支援室
協力:
京都大学 アフリカ地域研究資料センター
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